弁護士コラム

sp_bn01.png
メールでのお問い合わせ

2014.09.01更新

数日前,ウェブで気になる記事を見つけました。

[ quote ]

日本共産党広島県委員会は28日,広島県庁で記者会見し,広島市安佐南区の土砂災害で,警察が同区社会福祉協議会にボランティア登録した名簿の提出を求めていたことに抗議しました。
問題は,社協にボランティア登録した人から,「この名簿は警察に渡すといわれた」という訴えが党によせられたことから,調査すると,社協の担当者は事実を認め,安佐南警察署の職員に23日800人,25日1000人分を渡したことがわかりました。27日に辻恒雄県議,村上昭二県委員長,嵜隆秀広島市西地区委員長が県警に抗議すると,県警は安佐南署がやっていることだと事実を認め,「治安対策上必要なので」と今後もやめるとは言いませんでした。
会見で村上県委員長と嵜地区委員長は,被災地で空き巣などが横行していて治安対策には万全を尽くすよう求めた上で,「個人情報の保護からも人権上も重大であり中止するよう求めた」と述べました。

『しんぶん赤旗』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-29/2014082915_01_1.html
(2014.08.29)

[ unquote ]

事件と関係ないボランティアの方々にとってはたいへん気持ち悪い出来事で,両委員長も「個人情報の保護からも人権上も重大」と言っていますが,安佐南区社協がこの抗議に応じて名簿の提出を拒否した場合にどうなるのか,ということも考慮しておく必要があると思います。

安佐南区社協が個人情報保護法の規制を受ける「個人情報取扱事業者」に該当することを前提に考えると(同時に5,000人以上の個人情報を取り扱う事業者と定義されているので,該当することはおそらく間違いないと思います。),個人情報を取得する際は,取得の目的を特定することが義務づけられています(15条1項)し,本人の同意がない限り,その目的達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことも(16条1項),第三者に開示することも(23条1項柱書)許されていません。しかし,「国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって,本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき」は一般的に第三者への開示が認められているので(23条1項4号),仮に安佐南区社協が登録時に「行政機関から法令に基づく要請を受けたときは同意がなくても開示することがあります」といった事情を明示していなくても,開示に違法性はありません。

共産党の抗議に従うと,任意の開示ができないので,警察としては,捜索差押令状(ガサ状)を取らない限り名簿を取得できないことになります(安佐南区社協としては,「令状を取ってきてください」と言って任意提出を拒否すべきことになります。)が,捜索差押えは,捜査の取っ掛かりになる手続なので,その必要性(刑事訴訟法218条1項前段の「犯罪の捜査をするについて必要があるとき」)は比較的緩やか解釈されていて,窃盗と無関係なボランティアの情報が含まれているということだけで裁判所が令状請求を却下することは考えにくいのが実情です。そうなると,警察にとっても社協にとっても二度手間で,任意提出を拒むメリットがどこにあるのか,よく分からなくなってしまいます。

むしろ気になるのは,安佐南区社協がなぜボランティアを名簿化しているのかということで,あったほうが便利なのは分かるのですが,敢えて個人を特定できない形で名簿化して,余計な負担を軽減することができないかということも,検討されていいのではないかと思います。

あびこ

投稿者: 昭和通り法律事務所

Facebook 弁護士コラム